1.インターベンション治療とは
消化器病におけるインターベンション治療は、最近急速な進歩を遂げております。このインターベンション治療は介在性または介在治療を意味し、“さまざまな疾患における侵襲的な診断や治療のために、放射線、内視鏡および超音波など種々の医療器材を用いて診療行為をなすこと”と考えられ、内科、外科、放射線科という分野にとらわれず幅広い診療行為を意味します。当院では、最新のIVR-CT(血管造影装置とCTを同時に試行可能な高度医療機器)、内視鏡システムおよび超音波検査装置を導入し、表に示すように種々の疾患に対してさまざまな治療を行っております。
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2.膵がん
膵がんは画像診断の進歩にもかかわらず診断時に約70%以上が進行がん(Stage W)の状態で発見されます。このため膵がんは難治がんの代表として捉えられ、消化器がんの中で最も治療成績が悪いのが現状です。この現状を克服するために、膵周囲動脈塞栓術(TPPAE)、肝脾動注化学療法(HSAIC)を本間院長が開発し、進行膵がんの治療成績を著しく改善してきました。TPPAEとは、足の付け根から血管に挿入したカテーテルを用いて、膵がんを養っている血管をつぶすことによりがんを壊死させたり、複雑な膵周囲の血管のいくつかを閉塞することにより膵臓への流入血管を単純化して、効率の良い抗癌剤の動注療法を行えるようにする治療法です。HSAICとは、肝および脾動脈に留置したカテーテルから抗癌剤を注入して、膵がん原発巣と肝転移巣への強い抗腫瘍効果を期待する治療法です。
3.胆管がん
治癒切除不能な胆管がんに対しては、がんのために生じた胆管閉塞による黄疸を回避するするためにメタリックステントあるいはチューブステントを用いて胆汁の流れを良くする胆道内ろう術をおこなっております。さらに腫瘍の増大により胆道が再閉塞するのを防ぐために、カテーテルを用いてがんを養っている血管に抗癌剤を直接注入する方法(動注化学療法)を主として外来で行い、ステントの開存期間および生存期間の延長に寄与しております。
4.肝がん
現在2cm以下のがんに対してラジオ波焼灼療法(RFA)が肝切除と同等の治療効果が得られる事が明らかにされ、積極的に施行されております。RFAとは体の表面から直接肝臓に針を刺して、がんを焼いてしまう治療法です。しかし2-3cmを超えたがんへのRFA単独による治療では局所再発がしばしばみられることから、がんの進行ていどにより肝動脈塞栓術(TAE)、動注化学療法などの治療が選択され、あるいは併用されます。TAEとは、足の付け根から血管に挿入したカテーテルを用いて、肝がんを養っている血管へ薬剤を注入して閉塞させることによりがんを壊死させる治療法です。TAEにおいては、がんに対する壊死効果を高め、非がん部へのダメージをできるだけ少なくするため、肝動脈の末梢の腫瘍栄養血管に選択的にマイクロカテーテルを挿入し、抗癌剤とリピオドールのエマルジョンを注入したのちスポンゼルで塞栓する方法(亜区域塞栓術)をおこなっております。
5.肝硬変
肝硬変の合併症である食道静脈瘤に対して、内視鏡を用いた治療(EVL、EIS)が普及しており、これにより多くの静脈瘤は再出血なくコントロールすることが可能となりました。しかし胃静脈瘤ではしばしば血流が豊富であり、内視鏡単独での治療が困難な場合が多いため、カテーテルを用いた治療が必要となることが多くみられます。このような胃静脈瘤あるいは門脈-大循環シャントを伴う肝性脳症に対して、バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)、経皮経肝静脈塞栓術(PTO)などを施行して良好な治療成績が得られております。また内視鏡治療抵抗性の食道静脈瘤や難治性腹水に対して経頚静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)も施行しております。
6.消化管疾患
胃腸など消化管の病気に関しては、通常の電子内視鏡の他、検査による苦痛が軽度な経鼻内視鏡を導入し、胃・大腸のポリープや早期癌を発見・診断するのはもちろんの事、内視鏡を使ったポリペクトミーや粘膜切除術(EMR)も盛んに行っております。また、早期より導入したアルゴンレーザーによる早期癌や消化管出血に対する治療も効果を発揮しています。内視鏡的に止血困難例では、血管造影下に選択的動脈塞栓術を行い止血することが可能です。
7.最後に
現在、インターベンション治療の適応となる消化器疾患は増加しつつあり、その予防、診断、治療および緩和医療など一貫した医療体系が必要となっております。インターベンション治療とは、最小限度の侵襲的医療行為により患者さんのQOL(生活の質)を保障し、生命予後を改善するための一つの方法であります。医師より十分な説明をうけたうえで、治療を選択していただくことが大事であると考えます。